• HOME
  • お知らせ
  • よみがえる飛騨の古民家―築70年の古民家改修事例 ―
おしらせ

よみがえる飛騨の古民家―築70年の古民家改修事例 ―

よみがえる飛騨の古民家

今回は、のどかな里山に建つ一軒の古民家が、建替えではなく改修することで新たな命を吹き込まれ、お施主様の理想の暮らしを包み込む場所へと生まれ変わるまでの物語をご紹介します。

解体予定の廃屋に見た、原風景と可能性

のどかな里山に建つ古民家 休日に畑を耕しながら暮らせる適当な土地を探していた若いご夫婦が、里山の麓に良い土地を見つけられ、家を建てたいとご相談に来られました。その土地には、空き家となっていた廃屋がありました。当初はその建物を解体し、新しく家を建てる計画でした。 我々がはじめて土地の視察に向かった際、そこに建つ古い建物に強く心惹かれました。程よい大きさの典型的な飛騨の民家型をしており、後ろの里山と相まって風情がありました。中に入ると、しっかりとした丸太梁と柱で木組みされた架構が見えました。柱は傾き、床はまっすぐに歩けない程に歪んでいましたが、窓から見える里山の風景が心地良く、周りの畑と一体となった建主の望む家に蘇ると直感しました。

写真左は敷地確認にお伺いした際の改修前の様子。 写真右は修前のリビングダイニング。床組や柱が傾いているのが分かります。

築70年を再生する。伝統構法が持つ「直せる」強さ

我々は「建替え」ではなく、古い建物を改修するご提案をしました。はじめは大変驚かれましたが、皆さま共感し、提案を快く受け入れていただきました。明確な築年数は判りませんでしたが、前住の方の話から70年以上前の建物のようです。水廻りなどは土台、柱が腐食しており、地盤が下がっていたり床の不陸(水平)がひどく、場所によっては柱もかなり傾いていました。 いざ改築を行うには、かなりの難工事であることが予想できました。けれども、伝統構法で造られた木造建築は適切な補強を施せば、相当な傷みが激しい建物であっても再生が可能ですし、柱・壁の位置を変えることもできます。

【第一期】現代の暮らしに合わせる、間取りの改変

第一期工事 改修にあたり、まず考えたのは生活に必要不可欠な場所の確保です。既存の仕上げを取り払い、骨組みだけの状態にして、現代的な生活に沿うよう間取りを改変します。当初のオエ(囲炉裏のある客間)と、それに隣接する水屋(昔の台所)は1LDKと愛犬とのくつろぎスペースとして。玄関近くの土間や収納だった空間は水廻りに改変しました。ねま(寝室)だけは当初の間取りでの利用です。
これにより、LDKでは南東側に広がる広葉樹の森が近くに感じられる生活が実現しました。リビングダイニングの角には薪ストーブを設け、冬期は描れる炎を見ながら愛犬と暖をとります。 薪の調達はもちろん、焚き付けの杉の葉は犬の散歩を兼ねて拾い集めるとのこと。玄関前には季節の植物を利用したブーケが飾られ、四季に寄り添う、里山の暮らしを楽しまれているのが伝わってきました。 構造に関しては、腐朽した材を交換し、必要箇所にスギの厚板による耐力壁等により耐震補強を施しました。こちらの案件は高山市ではじめて、伝統構法木造建築物耐震診断・耐震改修工事の補助制度を利用した事例ともなりました。

玄関の間取りはそのままに、既存の建具等修理して用いています。
キッチンは対面式カウンターとし、雑多なものがリビング側から見えないよう配慮した。
改修後のリビングダイニング。暗くなりがちな古民家にトップライトから自然光が差し込み、障子を開けると広葉樹の森が広がります。

【第二・三期】家族の歴史と共に育つ家。二世帯同居への柔軟な対応

第二期・第三期工事 里山暮らしを始めてから数年後、車庫の台数を増やすためご依頼を受けました。ご依頼時、すでに車庫の台数を増やし、除雪機の位置や農具の収納量などの条件が明確でしたので、母屋との意匠に統一感を持たせるため、スギ板下見板張りとし板塀の塗装は施主ご自身で施されました。これが第二期工事となりました。 その後、親さんとの同居に合わせ、第一期工事では未着手となっていた部屋のうち一室を親御さんの部屋に、それに面して外を楽しむ広緑を増築しました。また、隣接するもう一室は茶道をたしなむ茶室として改修しました。そこから雨・雪に濡れることなく車庫にアクセスできる渡り廊下を設け、このように、生活の変化に柔軟に対応できるのが伝統構法の素晴らしいところで、悩む楽しみが絶えません。

母屋正面に広縁を設けることで、内外のつながりと内部空間に奥行きが生まれました。

世代を超えて受け継がれる、100年建築の価値

「次は門ですね」 第二期の工事を終え、今後の展望を気さくに話してくださいました。建物と時間をともにしますます愛着が湧く、里山に根差した理想の暮らしがそこにはあります。 新しい住人が、この建物でこれから30年暮らしたならば、100年以上使い続ける壊されず前の廃屋に価値を見出し、貴重な伝統木造建築を次世代につなげる、意義のある仕事となりました。

⼀覧へ戻る