オークヴィレッジとは

森の中の工房

オークヴィレッジは、おもちゃや文具、家具をはじめ家も自社で開発・設計し、国産材にこだわって制作まで行う工房。家や椅子、テーブルも、できる限り金物を使わず、伝統的な「木組み」で造り上げるため、その担い手である家具職人、大工や棟梁も自社で育成しています。
私たちのモノ造りは手間と時間がかかります。それは、効率や利益よりも大切にしたいものを追究しているから。1974年、飛騨高山の地で創業した時に掲げた3つの理念を、今も守り続けているからにほかなりません。

日本に暮らす私たちは、日本固有の気候風土を背景とした豊かな植生の森に恵まれ、森とともに生きてきました。そして住宅はもちろん、生活で使うさまざまな道具も木で造り、暮らしと自然が一体になった「木の文化」を育んできました。
しかし、20世紀中頃から始まった大量生産・大量消費、鉄鋼やプラスチックなどの工業製品の台頭によって、先人より受け継がれてきた木の文化・技術は衰退していく傾向にありました。こうした変化に危機感を抱いた5人の若者が集まり、日本の木を使った工房「オークヴィレッジ」が生まれました。その始まりにあるのが、日本の「木の文化」を拠り所とした持続可能な社会づくりへの思いを表した3つの理念です。

「100年かかって育った木は100年使えるものに」「お椀から建物まで」「子ども一人、ドングリ一粒」

創業時から今も変わらず、オークヴィレッジの企業活動、モノ造りは、この3つの理念に沿って行われています。

「三位一体」のモノ造り

オークヴィレッジのモノ造りは、家具や家も、100年以上お使いいただけることを大切に考えています。
家具に使用する広葉樹は、人手に頼らず森の中で時間をかけて生長したもの。木を伐って材料にする。それは、森の命をいただくこと。だからこそ、森や木を敬い、育ってきた時間と同じくらい使い続けることができるものにしていくことが造り手の使命だと考えています。
そして、「素材」「技術」「デザイン(設計)」という3つの要素がより高い次元で三位一体になった時、初めてオークヴィレッジが大切にしているモノ造りになると考えています。

素材

国産無垢材を「適材適所」で
使い切る。
かつて日本人は家のまわりにある木を使い、家を建て、道具を造っていました。長い年月の中で、木の特性に合わせた用途、加工方法が知恵として伝承され、木の文化として根づいています。例えば家の場合、地面の近いところには湿気があるから腐りにくいクリ、柱は通直なヒノキ、梁は松など、材料をきちんと選んで使う「適材適所」の知恵は、木造建築の基本となっています。

オークヴィレッジの家具は、広葉樹の木目や色を生かすため無垢の木を使用していますが、長い年月をかけて生長したナラやカバなどの広葉樹は、曲がったり、枝があったり、一本一本に個性があり、それが製品ごとに異なる表情を創り出しています。そのため、丸太から製材する際には、樹種ごとの木質、木目の出方、木目方向の伸び縮み度合いの違いやクセである木理(もくり)、曲がり具合などを見極めて、各製品のどの部材に適しているかを判断しています。例えば、同じナラでも、若くて粘り気のある材は椅子の脚に、古木の希少な木目の板は食器棚の扉の鏡板に、伸びやかで色目が美しい板はテーブルの天板にと、「適材適所」の使い分けをしています。

※例示の製品は廃盤や仕様変更を行う場合もございます。

木は、伐った時季によって木材の性質は異なります。最良の状態で製品づくりに活用するために水分を多く含んでいる木はしっかり乾燥させるなど、植物としての木、木材としての木、それぞれの性質を知っている必要があります。また、家具や生活用品として使用する場合には、その木がどのような方法で加工され、どのように使われてきたのかを理解し、木の特性に適した使い方をすることによって、永く、快適に使っていただけます。
家具の主要な部材となる天板や背板、框、脚などは木目や色で判断しながら切り出していきますが、その後にはどうしても端材が生まれます。それらは文具や小物、おもちゃなどに加工します。さらに、「寄木の積木」や「森の合唱団」のように異なる樹種のパーツを組み合わせて製品にすることで、新しい価値を見出しています。こうした木の性質や特徴への広い知識と深い理解によって、木を余すことなく活用する「適材適所」を目指しています。

技術

木の特性を活かし、
美しさと耐久性を引き出す
「木組み」の技。
どんなにいい素材を使っても、しっかりした加工技術がなければ100年以上使える家具や家にはなりません。
オークヴィレッジがある岐阜県高山市には、飛騨地方の豊かな自然を背景に「木を活かす」技術と感性を備えた「飛騨の匠」の技が受け継がれています。奈良時代から都の寺社建築で腕をふるい、江戸時代には高山祭の屋台を造った「飛騨の匠」。いまも100年以上の歴史を刻む建物が数多く残っており、それらはオークヴィレッジの技術の原点となっています。

地震国である日本で、100年どころか1000年以上も健在な建築が残っているのは、伝統構法である「木組み」の技術によるところが大きいと言われています。
家の柱や梁をボルトで固定したり、椅子の座面と脚を金具で取り付けたりすれば、強度が増して長持ちすると思われがちです。しかし、実際にはボルトや金具は錆びて劣化し、地震や強い力が加わると金物が木の部材を破損させ、結果として家や家具の寿命を縮めます。金物に頼らず、木の特性と用途に応じて加工し組み上げる「木組み」は、伝統に裏打ちされた強さとしなやかさ、そして美しさを兼ね備えた工法。職人の肌感覚で細工される高度な加工技術はもちろん、構造によって接合部にかかる荷重に応じた工法の修得、そして何より木の特性を熟知することが不可欠な、高度な加工技術です。
その技は、木造建築はもちろん、家具造りにも生かされています。テーブルなどの天板の反りを抑える「蟻桟(ありざん)」、食器棚や書棚など箱物の強固な構造体となる「框組み(かまちぐみ)」、テーブルや椅子の強度を求められる接合部に用いる「ほぞ組み」、箱の面を接合する「かんざし」など、伝統の技に独自の工夫を重ねて進化させ、100年使えるモノ造りを実践しています。

オークヴィレッジの家具は、部材造りから仕上げまで、一人の職人が責任を持って行います。家具の製造にあたっては設計図に寸法や形状は書いてありますが、どんな「木組み」で組み上げるのか、角の面取り仕上げの細かなニュアンスは長年の経験に裏打ちされた職人の腕で仕上げます。また、家具の仕上がりの大きなポイントとなる木目の選び方、見せ方も職人の目利きで最善を選んでいます。そのため、家具職人は高度な技術だけでなく、豊かな感性、使う人の身になった心配りが重要な資質となります。
100年使える家具を造る技と感性を身に付けた家具職人。100年住み継ぐことができる家を造るにふさわしい技を修得した大工や棟梁。日々の仕事を通して技と思いを継承し、現代の「飛騨の匠」を育て続ける。それもオークヴィレッジの大切な使命と考えています。

デザイン設計

木の魅力を引き出し、
そこに暮らす人「らしさ」を考える。
永く時間を共に過ごすという観点で考えると、広葉樹、しかも無垢材は人と暮らしにとても親和性の高い素材といえます。時間の経過とともにゆっくりと風合いも変化し、角は少しずつ丸くなり、思いがけず付けた傷も愛着に変わっていきます。
そのため、私たちは、家具や家は、素材そのものを活かし、求められる機能を兼ね備え、いつまでも美しくなければならないと考えています。家や家具がことさらに存在を主張するのではなく、そこに暮らす人たちのストーリーを紡ぐ傍らにあり続ける。構造的な造形美を追究する一方で、愛着が湧く普遍性があるデザインや設計を大切にしています。

オークヴィレッジの家は、飛騨の匠に学ぶ木組みを生かした木造建築。庇(ひさし)は深く、しっかりと出し、光の入り方と風の通り道を考える。伝統に織り込まれた機能を生かし、その家で生活する人「らしさ」をデザインに落とし込みながら、暮らしを形にしていきます。それは、外観であり、間取りであり、時には建具や家具、照明に至るまで、丁寧な設計と美しさにこだわった施工によって、世界に二つとない上質な住まいを提案して行きたいと考えます。

生活する人が日々からだを預け、手に触れる家具やおもちゃは、木の魅力を最大限に引き出す「適材適所」のデザインを心がけています。例えば、日本で多く育つ広葉樹・カバの木を使用した「kabanoデスク」のシリーズでは、堅くて緻密な木質だからこそ表現できるエッジ(稜線)を際立たせたデザインにしています。また、木のおもちゃシリーズ「あのまとぺ」では、石ころや木枝のような自然界にある原初的な形をモチーフに採り入れました。乳幼児期のお子さまが自然界とよりつながりやすくなるようなデザインを意識しています。

森と暮らしをつなぐモノ造り。100年以上先まで見据え、持続可能な社会づくりに取り組むオークヴィレッジの家具や家には、そこに暮らす人みんなを幸せにする存在でありたい、という私たちの願いを込めてお届けしています。