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百年の年月に耐える、伝統構法の家―築100年超の古民家改修事例 ―

JAZZ喫茶 はだ氷室

日本の伝統的な木組の技術で建てられた古民家は、時を経てもなお風格を失わず、地域の風景に溶け込んでいます。
今回ご紹介するのは、大阪と奈良の県境に位置する築百年を超える古民家の改修事例です。伝統構法のよさを活かしながら、現代の暮らしに沿った空間へと再構築した本プロジェクト。その設計方針と具体的な改修内容をご紹介します。

伝統を尊重した改修計画

母屋は伝統的な構法(木組)で建てられた古民家ですが、これまでに幾度かの増改築が行われており、一部の屋根では雨漏りが確認されるなど、早急な修繕が必要な状態でした。施工主の方と綿密な打ち合わせを重ねた結果、「新築時の母屋の形にできる限り戻し、増築部分は最小限に抑え、それ以外は減築する」という方針が定まりました。具体的な改修内容としては、以下の点に重点を置いています。

玄関戸や窓をやり替えた南外観

住まいの再構築と生活動線の見直し

玄関戸を交換して防犯性を向上させるとともに、玄関土間から室内へ上がりやすくする工夫を施しました。

生活の中心となる居間を改めて整え、水まわり(浴室・洗面所)を隣接させることで、日常動線の利便性を高めました。また、既存の間取りでは、応接間(居間兼用)、キッチン、ダイニングがそれぞれ独立していましたが、今回の改修ではリビング・ダイニング・キッチン(L・D・K)を一体化しました。これにより、空間はよりコンパクトかつ機能的になり、南北に窓を設けることで風通しも確保され、家族が自然に集える場となっています。

玄関
小上がりを設け、段差を軽減しました。
LDK
新たに一体となったLDK。構造南側に窓を設け、南東に風を通せるようになりました。
キッチン
キッチンは対面型とし、足元が気にならないよう配慮しました。キッチンの扉にはカバ材を使用しています。
(左)洗面脱衣室(右)浴室
木材をふんだんに使用した洗面脱衣室と浴室。浴室の板材は水に強いサワラの赤身を使用しています。

1階の和室4部屋は現状を維持しつつ、窓の改修のみを行いました。
2階の3部屋については、ビニールクロス仕上げから左官壁仕上げへ変更し、外部に面する建具の修繕も実施しています。

減築による空間の再生

増築されていた部分を減築し、かつて存在していた北側の広縁を復活させました。
その結果、敷地の北側に空地が生まれ、北側の和室2部屋には新たに光と風が届くようになりました。トイレは従来と同じく、北側奥の落ち着いた位置に配置し、明るい廊下を通ってアクセスできるよう内装を整えました。

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広緑
北側の増築部を撤去し、広緑が明るくなりました。

未来へ受け継ぐための改修

今回の改修を通して、100年前にこの家を建てた職人たちが選び抜いた素材を、適材適所で活かしながら高い技術で建てられた母屋が、時を経てもなお健全な状態であることが確認できました。
一方で、家族構成や暮らし方の変化に応じて、増改築が必要とされる背景も理解できました。特に水まわりにおいては、設備機器の進化とともに大きな変化が求められるため、あらかじめ改修しやすい構造を新築時から計画しておくことの重要性を、改めて認識しました。

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