
オークヴィレッジの家具は、「極力、木以外の素材を使わない」という強いこだわりから生まれています。
実際には丁番などの機能金物を用いたり、強度に関係のない部分に木ネジを使ったりすることもありますが、構造部分には金物を使わないよう工夫をしてきました。その背景には、木が持つ温もりや強さを最大限に引き出し、長く愛用できる家具を届けたいという思いがあります。
近年は搬入時の課題を解消するため、脚を取り外せるテーブルの需要も高まってきました。
今回は、そうしたニーズに応えつつ、木だけで組み立てるための試行錯誤と、こだわりの家具づくりの舞台裏をご紹介します。
木をつなぐ伝統工法
木同士を接合する場合、一般的には木ネジを使いますが、オークヴィレッジでは場所ごとに適したホゾなどの伝統的な仕口を、接着剤の助けを借りながら用いています。
ダボ接合(雇いホゾに近い構造)も、完全固定になるため極力避けています。組み立て式家具に適した分解可能な仕口は限られており、建築で使う車知継ぎなどを家具サイズに落とし込むのは容易ではありません。
これまでによく使われてきたのは「通しホゾ楔止め」です。例えば一枚板テーブルの脚と貫などに採用しています。kigumiシェルフも形こそ異なりますが、原理は同じ「ホゾを穴に通し、楔で引っ張る」構造です。楔の角度によってホゾを引っ張り、摩擦で固定する仕組みは、見た目以上に理にかなっています。


木の異方性に強い「通しホゾ楔止め」
木は繊維方向とそれ以外の方向で性質や伸縮量が異なる“異方性”を持ちます。
通しホゾ楔止めは、この異方性に対して寛容です。ホゾ穴側の板は厚み方向の伸縮が大きく、ホゾは繊維方向なので伸縮が小さい。この差を楔構造が吸収し、多少位置が変わっても固定には支障がありません。ただし、ホゾが突き抜ける形状になるため、意匠面で制約があります。
木組みによる組み立て式テーブルの挑戦
10年以上前、金物を使わず分解・組み立てできる家具づくりに挑戦しました。それが「コロンブスデスク」です。通しホゾ楔止めと原理は同じですが、楔の代わりにカムを用いました。
この方法は意匠の自由度は高いものの、カムの偏芯量によって引っ張る力が制限され、製作精度に非常に気を使う必要がありました。デスクなど強度に余裕のある家具には使えますが、4本脚のテーブルにはやや分が悪くなります。そこで構造の強度を補う工夫が必要になります。


構造で強度を補う工夫
強度を補うため、妻手側の脚をあらかじめ組み、三角構造を採用するなど試行錯誤を重ねました。そこそこの強度は得られたものの、コスト面で課題が残り、この案はお蔵入りとなりました。
木のネジという発想
楔やカムの発想から、「木そのものをネジにする」構想は以前からありました。しかし当時は加工精度が悪く、商品化は困難でした。近年の加工技術の進歩により、木製ネジの製作が可能となり、脚の固定方法の目途が立ちました。


挑戦の結果に誕生した「Mori:toテーブル」、そして新作「Egretテーブル」
最終的に、組み立て式テーブルの「Mori:toテーブル」が完成しました。販売はまだ日が浅いものの、試行錯誤の末に先人の知恵と現代加工技術を融合させた家具として、多くのご家庭に届けられています。
そして今年、新たに同じ理念を受け継ぐ組み立て式テーブル「Egretテーブル」が登場します。木組みの知恵と技術を活かしたモノ造りは、これからもさらに進化を続け、次の世代へと受け継がれていきます。