
見た目の美しさだけではなく、長く心地よく使えること。
木材の個性を活かしながらも、環境負荷を抑えること。
有効に活用されていない木材に日を当てること。
そして、時代や暮らしの変化にも寄り添えること。
Mori:toチェアやEgretチェアは、そんな理想の椅子を形にするための対話と試行錯誤から生まれました。
これらの商品がどのようにして生まれたのかをご紹介します。
- [1] 座り心地への挑戦から始まった椅子づくり
- [2] 新たな着想、シェーカーチェアから
- [3] 商品情報
座り心地への挑戦から始まった
椅子づくり
椅子の開発に本格的に取り組み始めたのは、かれこれ20年前のことです。
当初は、座り心地の良さと美しい姿を目指して、IbisチェアやSwallowチェアを開発しました。これらは、背のあたりや座面のウレタンフォームに工夫を凝らし、座り心地を追求した設計の椅子でした。
それ以前、オークヴィレッジの椅子の多くは平らな板座が主流で、素材そのものが硬いため、快適さを追求するには限界がありました。そのため、板座からはしばらく距離を置いていたのです。
しかし近年、板座の椅子にも一定の需要があることを受け、改めて座り心地の良い板座の椅子を検討し始めました。
板座に座り心地を
座り心地を高めるには座彫りが有効です。しかし、正面から削る従来の方法では加工に時間がかかり、コスト面での課題がありました。
その課題を乗り越えたのが、Mori:toチェアシリーズです。試行錯誤の末、座彫りの加工方法を工夫し、比較的快適な座り心地の板座椅子をつくることができました。
また、ウレタンフォームを使用しないことで石油由来の素材を避けられるため、環境への負荷も小さくなります。これはオークヴィレッジの理念にも通じる大きな成果でした。


新たな着想、シェーカーチェアから
Egretチェアは、「理念をより突き詰めた椅子をつくれないか」という問いから開発が始まりました。
軽く、座り心地が良く、そしてサステナブルな椅子とは——。そんな中、社員のひとりから「シェーカーチェアを自分たちの視点でつくってみてはどうか」という提案がありました。
シェーカー家具とは、北米に移住したキリスト教の一派(シェーカー教徒)が、身近な素材で自らの道具を作った生活用品。私たちの考え方とも通じるものがありました。
シェーカーチェアを現代に再解釈する
伝統的なシェーカーチェアは、細い部材を組み合わせたラダーバック(梯子状の背もたれ)の椅子です。装飾を排した美しい形ではありますが、背のあたりは硬く、座面と脚の構造も現代の感覚には合わない部分がありました。
そこで、シェーカーチェアの良さを活かしながら、現代的な使いやすさと快適さを追求することにしました。
背もたれはラダーバックの形式を保ちつつ、3本の横桟それぞれに異なる曲率をつけ、曲げと削りを加えることで、立体的な当たり心地を実現しました。

日本の環境に合う座面に
座面については、素材としてペーパーコードを採用しました。多くに用いられている封筒編みも検討しましたが、日本の高湿度環境ではペーパーコードが伸びる事が懸念されたので、張りが緩みにくい平織りを採用することにしました。
また、伝統の意匠と現代の暮らしを両立させることができるよう、椅子全体の設計バランスも細かく調整しています。


木材選びにも理念を込めて
シェーカーチェアには、もともとアメリカ北部に自生するメープル材が多く使われていました。日本国内で代替するならカエデ材が近い存在ですが、地場の素材を活かしたいという考えから候補から外れました。
国産で、毎年一定量は産出されているものの、量が少ないため一般にはほとんど使われていない木材。その中から、カエデと同じ散孔材で、木肌が緻密で美しいアサダ材を採用しました。
この素材選びもまた、私たちの理念に沿った選択です。
Egretチェア、その姿に込めたもの
こうして生まれたのが、今回のEgretチェアです。
一見するとシンプルで素朴な椅子ですが、その一脚には、素材と技術、思想のすべてが詰まっています。
ぜひ一度、座っていただき、私たちのこだわりを感じていただけたら幸いです。
商品情報