
今回ご紹介するのは、これまで家具材としてはあまり使われてこなかった国産材「アサダ」です。2025年の新作ダイニングシリーズ「Egret丸テーブル」や「Egretチェア」、そして「暮らしのお膳」に、この木を用いました。オークヴィレッジの50年の歴史の中でも、テーブルや椅子に使うのは今回が初めてのこと。静かに、しかし確かな存在感を放つこの木の魅力についてお話しします。
- [1] 山に静かに佇む、堅実に生きる木
- [2] 触れて感じるアサダ材の魅力
- [3] なぜ、これまで使われてこなかったのか
- [4] アサダ材の家具・暮らしの木製品
- [5] 木とともに受け継ぐ文化
- [6] 商品情報一覧
山に静かに佇む、堅実に生きる木
アサダ(学名 Carpinus japonica)は、北海道から九州、さらに朝鮮半島や中国など東アジアに広く分布するカバノキ科アサダ属の木です。日本ではこの一種のみが自然に育っており、クリやコナラのように群生することはなく、他の広葉樹と混じり合いながら山地に点在して成長します。アサダは日陰でもしっかりと根を張って生きる強さ(耐陰性)を持ち、ゆっくりと時間をかけて育ちます。その過程で生まれる緻密な材質は、風や衝撃にも負けない強さを備え、やがて極相林の樹冠をなすまでに成長できる堅実に生きる強い木です。

触れて感じるアサダ材の魅力
実際に加工してみると、その魅力が手に伝わってきます。
粘りがあって硬く、磨くほどに自然な艶が現れる質感。木の中心部は灰紅褐色、樹皮に近い辺材はほんのりピンクを帯びた灰乳白色で、まるで人肌のような柔らかさを感じさせる色合いです。ゆっくりと成長した木らしい細やかな木目はしっとりと落ち着いた表情を見せます。同じカバノキ科のミズメ(梓)が持つ力強さとは異なり、ややトーンを落とした上品な佇まいこそ、アサダ材の個性といえるでしょう。

なぜ、これまで使われてこなかったのか
丈夫で緻密な木肌、美しい木目を持ちながらも、アサダ材が家具材としてあまり使われてこなかったのは、山地に点在して育つため採取量が限られ、広く知られていなかったからです。いわば「眠っていた魅力」を秘めた木。
私たちはこの素材と向き合い、その良さを暮らしの中に息づかせたいと考えました。見過ごされていた木が、日々の生活に寄り添う存在へ。
そんな思いから、新たなダイニングシリーズや暮らしの木製品が生まれました。
アサダ材の家具・暮らしの木製品
この希少なアサダ材を用いて生まれたのが、「Egret(イグレット)」シリーズです。
白鷺のように軽やかで静かな存在感をもつ家具たちは、現代の暮らしに自然と溶け込みます。

直径100cmというサイズは、現代の住空間にほどよく馴染みます。
緻密な木肌がもたらす心地よい手触りと、アサダ材特有の温かみある色合いが、食卓やリビングに穏やかな表情を添えます。
木組みの工法を活かしながら、組み立ては工具不要のネジ式。伝統の技と現代的な使いやすさを両立させました。

しなやかな座り心地と軽やかな佇まいが、北欧家具を愛する方々の心にも響くデザインです。

日常のひとときに、アサダ材の温もりを気軽に取り入れられる暮らしの木製品です。
木とともに受け継ぐ文化
調べを進める中で出会った書籍『カバノキの文化誌』(アンナ・ルウィントン著)には、アサダが属するカバノキ科の多様な木々が、人類の文化発展に深く関わってきたことが、多くの事例とともに紹介されています。
読み進めるほどに、自然と人との関わりが織りなす深い世界に引き込まれました。
人々が木の特性を見極め、それを生活に生かしてきた知恵と時間を思うと、気の遠くなるような歴史を感じます。
アサダ材に触れ、調べを通して改めて感じたのは、それぞれの木が環境や仲間との関わりの中で生き残る術を探りながら、長い時間をかけて育まれているということです。
アサダの良さを伝えてくれた取引先の方々、飛騨の諸先輩方、そしてこの木を好んで使っていた恩師の姿が思い出されます。
これからこのアサダの家具や木製品が、次の世代へ木の文化を伝える存在になっていくことを願っています。



