
注文家具工房として始まったオークヴィレッジは、創業時から今も変わらず「素材」「デザイン」「技術」の三要素の調和を大切にしています。
どれか一つが欠けることなく三位一体となって初めて、確かな品質の家具を造ることができるためです。
“素材は良いけれど使いづらい”、“格好いいけれど壊れやすい”…そのような家具造りは私たちの目指すものではありません。何よりも、お使いになる方を幸せにするものでなければいけません。
「素材」「デザイン」「技術」それぞれに携わる職人は異なりますが、品質と価値を日々追及する思いは同じ。ひとつの工房内で三位一体となり、確かな品質の家具をこれからもお届けしてまいります。
今回は、職人の視点からオークヴィレッジの「技術」についてご紹介します。
木と向き合う技術、その過去とこれから
技術というものは、時代とともに少しずつ変わっていくものだと思います。木の文化は、縄文時代から続く長い時間の中で育まれてきたもので、その中で生まれた伝統的な技術には、今も変わらずに受け継がれているものがあります。
素材が変われば、技術も変わる
しかし例えば、原材料が潤沢で望んだ素材が簡単に安く手に入る時代と、そうでない時代とでは当然ながら使う技術の重要度合の変化、または未知なる素材への対応などが求められます。近年、早生樹やスギを家具用材にする研究が盛んなのも、現在の状況をよく表していると言えます。
素材と技術、ちょうどいい関係
現在のナラ材の枯渇状況は、オークヴィレッジのアイデンティティに関わる大変重要な問題ですが、ここ最近私が感じていることは、創業当初より愚直に木組みの家具を造ってきた経緯の中、近年材料の径がどんどん細くなり、それに比例して硬くなってゆく素材と、オークヴィレッジが実践してきた技術というものの相性が大変よろしいと言うことです。
具体的に例を挙げるなら、オークヴィレッジ家具の代表的な技術である「蟻桟(吸い付き桟)」は、テーブル天板の反りを抑制するための技術ですが、逆に言えば反りの少ない、老成した大人しい材料に対しては、過剰な技術と言えなくもありません。ところが樹齢の若い、勢いのある材料は人間と同じで、概して暴れやすいものです。このような材を相手にしたとき、伝統的な工法で造り上げたものは非常に高い安心感がある。偶然なのか予測していたことなのかは私には分かりませんが、ようやく今になって、その真価が発揮されているような気がします。


限られた材料が、新たな発想につながる
一方で、新たな技術への挑戦が無くなることはありません。先述しました通り、時代の流れで材料が細くなってゆけば、幅広の板をこしらえるためにそれ相応の手間がかかってくるわけです。そこをプラスと見るかマイナスと見るか。
2024年に発売を開始した『Swallowセミアームチェア』の笠木は、そこをうまい具合にプラスに転じた技術だと自負しております。しかし、技術で解決可能なことなど実はそれほど多くはない、ということもまた実感としてあります。
“100年使ってもらうため”に、技術ができること
どのように素材を調達し、持てる限りの技術でモノを造り、それが価値あるものとして世に受け入れてもらえるかどうか。
そしてそれが“100年使える”モノなのか、どこまで森に還元できるのか。
これからの「技術」はこれまでになく、縦横の連携と時間軸のつながりを一層意識せざるを得ないものになってゆくことでしょう。
執筆:制作部 木地加工セクション T.S