
今回ご紹介するのは、家具の制作に欠かせない「面取り」です。家具などを設計するにあたり、考えなければならないことは多岐にわたります。 機能・構造・強度・意匠・・・などなど、どれも重要なのですが、細部ながらも作品の印象を決める大きな要素が「面取り」です。今回は設計だけでなく職人からの目線も合わせて「面取り」についてお話ししたいと思います。
- [1] 「角を角ではなくす」——安全と家具を守る機能
- [2] デザインの印象を操作する「影」と「ボリューム」
- [3] 図面には表れない職人の技術「糸面取り」
- [4] 指先の感覚で仕上げる「1ミリ」の精度
- [5] 商品情報一覧
「角を角ではなくす」——安全と家具を守る機能
物を造っているとよく口にする言葉「面取り」・・・。考えてみるとなんだか分かりにくい言葉です。角を角では無くするということなのですが、「角を取る」のに「面取り」とはこれなんぞや。角に面を作るといったところでしょうか。
加工したての「面取り」を施していない角は、比較的柔らかいと言われる木であっても結構鋭利で、不用意に撫でたりすると切り傷を負いますし、切れないまでも触って痛く感じます。
また「面取り」は人だけでなく家具も守っています。「面取り」が小さいと角に何かが当たって大きく凹んだり角がすぐに欠けてしまいます。欠けてしまえば着色された作品であればそこだけ色が落ちてしまいます。 (古びた雰囲気を出すために意図的にそういった仕上げをする場合もあります。)
デザインの印象を操作する「影」と「ボリューム」
「面取り」は機能的な理由だけでなく、作品の意匠にも大きく関わっています。
「面取り」が大きいと面の幅や角度により陰影を作り出し立体的な印象の作品になり、「面取り」が小さいと平面的でシャープな印象になります。


テーブルの天板では上面に大きな丸い「面取り」を施すと天板が厚く見えボリューム感が上がり(A)、逆に下面にすると薄く見え軽い印象を作り出します(B)。 同じ面取りを施すにしても、その施し方で作品の印象が変わります。平面を強調したい場合には(C)、長手方向を強調したい場合は(D)といった違いが有ります。

図面には表れない職人の技術「糸面取り」
実際に物を造る現場からすると、寸法が図面で指示される「面取り」はまだ分かりやすく、それに見合った刃物で加工すればそれなりの形・仕上がりになります。
難しいのは「糸面取り」です。 この「糸面取り」は角が欠けない程度・手で触って痛くない程度の「面取り」という意味で、通常1ミリ程度の面を作り出す作業なのですが、その微妙な大きさの加減は職人に任されます。
しかし、このアバウトさが曲者。先ほど1ミリ程度と書きましたが、作品の形や大小によっても具合の良い大きさは違いますし、触って痛くないように糸面を大きめに取ると野暮ったい印象になってしまうので、「面取り」によって作品の表情を変えない範囲のギリギリの大きさを狙うのです。
指先の感覚で仕上げる「1ミリ」の精度
この「糸面」は当て木に紙やすりを貼り付けて「糸面」を取っていくわけですが、漠然と何も考えず同じ動作で取っていくと、所々で面の幅が違ってしまいます。同じ材料であっても場所により硬さが違うので、硬い所は面幅が小さく、柔らかい所は大きく取れてしまいます。また材料の両端に近い所では力の入り方が変わるので面幅が大きく取れてしまいがちです(E)。当て木を持つ手に神経を集中し、一定の幅になるよう慎重に角を取っていきます(F)。
不用意に大きかったり幅が揃っていない糸面の作品は、どことなく野暮ったい印象を与えます。「ピシッ」と揃った糸面が取られた作品は誰が見ても気持ちの良い物だと思います。



