東京都下の、いや、かつての高級住宅街での空き家問題、なんて取り沙汰されつつ一方で東京都心部ではバブルのごとき再開発。これからの東京はどんな展望?(Perspective of TOKYO)
生産緑地の指定解除による『2022年問題』
1974年、大都市圏の一部の市街化区域内における農地の宅地化を推進するために生産緑地法が交付される。
指定された区域内にある農地に宅地並みの固定資産税が課される。 ⇒ 宅地にした方が経済的に有利なので、宅地化の推進を促す。だけども、都市部で農家を営みたい人達もおり、そのニーズに応えて、1991年3月に改正。(改正生産緑地法)
一定条件を満たした上で自治体に農地申請すれば以降30年間にわたって、固定資産税は税率の低い農地として、また、相続税については納税が猶予される。
その農地-生産緑地の8割が2022年で満期となる。
何がおこるのかと言えば、郊外ベッドタウンにある生産緑地が宅地として大量に不動産市場にあふれてくるかもしれない。 = 地価は大幅にさがる。かもしれない、と。
なので、『特定生産緑地』制度が成立。『特定生産緑地』の名称で再指定を受ければ、農地の買い取り申し出時期を10年先伸ばしできる、などの指針が示された。
他にも...
・生産緑地に指定する面積の下限が500㎡から300㎡に。
・隣接していなくとも、街区内であれば一団の農地とみなす。
・建築制限の緩和:農産物販売所や加工所、レストランの併設も可に。
・田園住居地域の創設
生産緑地は第一種低層住居専用地域に立地することが多く、直売所やレストランの建築は不可だった。が、新たに田園住居地域を指定する事で可に。
改正法案だけを見ればなかなか楽しそうなことが起こりそうな予感だけども、如何に?
と言う感じでしょうか?
こちらは、主に都心郊外の話し。
では一方で都心は?と言うと?
アジアヘッドクォーター特区
※この本には他にも興味深い事が書かれているのでお勧めです。
『東京都心・臨海地域』、『新宿駅周辺地域』、『品川駅・田町駅周辺地域』、『羽田空港跡地地域(天空橋)』の都心の5地区を対象に『税別、規制緩和、まちづくりを組み合わせた戦略的企業誘致』を目標に揚げた構想で、大きく4つの柱がある。
①『誘致・ビジネス交流』、②『ビジネス支援』、③『生活環境整備』、④『事業継続計画を確保したビジネス環境整備』。
例えば、法人税減免、英語によるビジネス・ワンストップサービスの提供。
(ひとつの場所でさまざまなサービスが受けられる環境、場所のこと。行政や商業において用いられる)
英語に堪能なコンシェルジュが窓口となって、弁護士、公認会計士、行政書士、税理士...など必要に応じて専門家とコンタクトをとり、日本で起業したり、法人組織を立ち上げるなどの許認可関係を英語で一手に引き受けるサービスの提供を目指す。
さらに、生活コンシェルジュによるワンストップサービス。
外国人ビジネスマン家族に対して、不動産情報、買い物、医療、教育など生活全般にわたる英語堪能なコンシェルジュによるサポートシステムを構築する。文部科学省、厚生労働省にも働きかけて規制緩和を実施して行くとのこと。
http://www.seisakukikaku.metro.tokyo.jp/invest_tokyo/japanese/invest-tokyo/ahq.html
少子高齢化と言う国の存在の根幹に関わる問題に対して(決して大袈裟ではなく。)
外国人、外国の企業を誘致する為に、国際的なビジネス環境を整備して補う、と言う事で。
その為には東京、東京圏の、都市力を高める、と言うのが大きなキーポイント、と言うことらしいです。
そして、東京は2017年世界都市力ランキングで3位に浮上。
ランキングの評価基準である居住に関しては、前年の6位から14位に低下。以下『森記念財団 都市戦略研究所』より抜粋。
世界の都市総合力ランキング(GPCI) 2017:森記念財団 都市戦略研究所
居住の上位5都市は、ベルリン(1位)、アムステルダム(2位)、ストックホルム (3位)、ウィーン(4位)、フランクフルト(5位)である。
・ベルリンは、昨年の2位から順位を1つ上げトップとなった。「生活利便性」の
スコアはやや低いものの、ほぼ全ての指標で高い評価を得ている。
・昨年1位だったパリは、7位へと大きく順位を下げた。2015年におきたパリ
同時多発テロ事件が大きく影響した。
・アムステルダムとストックホルムは、昨年はそれぞれ11位と10位であった
が、今年から新たに導入したICT環境の充実度で高い評価を得たことで、順
位を大きく上げた。
・福岡(13位)、東京(14位)、大阪(19位)は昨年トップ10に入っていたが、社会の自由度・公正さ・平等さの評価 が低かったことなどを理由に大きく順位を下げた。
このランキングの評価基準である『居住』の評価項目スコアは、就業環境、居住コスト、生活良好性、生活利便性による。それが、それぞれにおいてさらに細分化されている。
今現在東京は、都心回帰で所謂、駅近のタワマン(タワーマンション)が大人気だが、もう都内、都内近郊の利便性の高い土地は全て開発済みで、大手デベロッパーは東京以外の都市圏の開発に移行しているらしい。そして今は各鉄道会社の乗り入れが普通になり都心へのアクセスは昔と比べたら格段にアップしている。そこへ新しい用途地域である田園住居地域が指定されれば、また郊外に対する人気は上がるかもしれない。
いやいや、何が言いたいかと言えば、住み継いでいかれる棲みかがベースにあって、それに対する各ライフステージに合う居住環境があればな、と思うもので。
利便性重視、資産流動性重視がないとライフステージはステップアップできないのだけれど、そこにばかりバランスが偏るのもまた、何か大切なもの(かなり抽象的ですが)を見失ってしまうのかな?とも思いもしますし。
東京のこれからの展望や如何に?と。
Perspective of Tokyoと言うことで。長くなりましたが。
ではでは。
藤塚 (設計監理)
(シリーズ:建築+【 X 】:その mix up を考える。はこちら ↓ )
Champuru Impressions:カルチャーから建築まで