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木の建築スケッチ5:吉島家住宅その2
2017年12月16日 (土)

 

引き続き、吉島家住宅その2です。

前回ご紹介した大きな吹抜空間の下には、土間の「どうじ」と畳の間の「おえ」「だいどこ」が広がっています。かつてはこの大空間に多数の客人・家人たちが往来をしていましたので、その時々によってスペースを簡単に間仕切る必要がありました。そのようなときに役立ったのが様々な種類の建具とその造作。吉島家にはそれらの工夫があちこちで見かけられ私たちの目を楽しませてくれます。そこで今回はその中でも特に象徴的な存在である「吊束」を紹介してみたいと思います。

 

通常、建具を滑らせる溝をもつ鴨居(建具の上にあるもの)は柱に取付けられることが多いのですが、ここの場合、その柱をとりはらい、上にあるしっかりとした梁から「束を吊り下げて」鴨居自体をささえる構造となっています。ですから建具を動かしたその先には何もありません。溝だけで突き止められて、いわゆる「ぶら下がり」状態となっています。

 

なぜこうなっているかといいますと、土間と畳の間の境界であるこのあたりには多くの人の動線が集中して大変混雑するため、できるだけ人の動きを妨げないように障害物としての柱を取り除きたかったというのが理由なんだそうです。なるほど、納得。

そんな機能上のこともさることながらやっぱり私を惹きつけるのは印象的なそのフォルム。吹抜けのほぼ中央部に鎮座するその姿は、一瞬「?」が頭に浮かぶほど不思議な光景として目に映りますが、ググっとひいて上部の美しい格子梁たちと一体的に眺めますとどうでしょう、全く違和感なく調和しているではありませんか。それどころかある種の精神性まで備わっているようにまで感じます。

 

入り口から内部に入るとこの独特な「吊束」が訪れた人達を一番最初に出迎えてくれます。様々に語りかけてくれる、そんな気がするこの木組みを機会がありましたら是非一度ご覧ください。当時のことに思いを馳せながら・・・。

 

 

秋山(設計監理)

-新WEBサイト以前のブログを再掲-

 

(シリーズ「木の建築スケッチ」 はこちら ↓)

木の建築スケッチ1:板倉と棚田

木の建築スケッチ2:法隆寺妻室

木の建築スケッチ3:東大寺南大門

木の建築スケッチ4:吉島家住宅その1

木の建築スケッチ5:吉島家住宅その2

木の建築スケッチ10:松本家住宅その1